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バンリの過去、独白 【2】 + バンリ100日 [小説:Dolly Shadow]

 
※ バンリの少年時代話、前回の続きです。先に【1】の方からお読み下さい。
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 その時でした。 
 背後で何か怒鳴り声がしたかと思うと、血相を変えた父がやって来て、僕を乱暴に引寄せたのです。
 僕は、ビクッと身を強ばらせてしまいました。
 掴まれた肩が痛くて、ジンジンと痺れます。
 父は、僕に怒鳴りました。何をしている。どんな失礼をしたのだ、と。
 その時の僕は、父が何故怒っているのかわかりませんでした。
 でも、今になって思えば…… 僕の側にいたのは、どう見えても重役らしい子供です。そして、そのボディーガード達に取り囲まれている僕、という構図。
 おそらく父は、僕が何か無礼なことをしたのだと思い込んだのでしょう。
 父は、いつものように一方的に僕を怒鳴りつけ、手を挙げようとしました。
 それは、いつものことだというのに。
 すぐに自分を襲うであろう痛みに、僕はいつものように怯え…… いつものように、ギュッと目を瞑りました。
 だけど、その時でした。
 あの人の声が、振り上げられた父の手を、いとも容易く止めてしまったのです。

 よせ!
 少年が言ったのは、ただそれだけでした。
 幼い少年の、澄んだボーイソプラノです。恐ろしい怒鳴り声でも、わめき声でもないのです。
 それなのに。
 それなのに、父は……
 いつものように僕を撲とうとした手を、父は、止めてしまったのです。
 まるで自分が撲たれたかのように、ビクッと身を竦ませて。その手を、止めてしまったのです。
 何が……
 一体、何が起こったのでしょう。
 おそるおそる目を開いた僕は、驚きのあまり息を飲みました。
 まるで鬼のようだった父の形相が、すっかり驚愕に変わってしまっています。まるで、突然打ち据えられた子供のように。
 僕と同じくらいの少年が、ただ一喝しただけ。
 それだけだと言うのに。
 少年は父を睨み付け、静かに言いました。
 その子は、俺と遊んでいただけだ。何も悪いことはしてない。放してやれ、と。
 すると、父は……
 ああ、今でも信じられません。
 父は…… 恐ろしい、僕の父は……
 その幼い少年に命じられるまま、僕の肩を、放したのです。

 一体、何が……
 どんな奇跡が、起こったのでしょうか。
 僕は、信じられませんでした。
 今目の前で起こったことが、解放された肩に残る僅かな痛みが、信じられませんでした。
 あの、父が。
 あんなにも巨大で、恐ろしい父が。
 あんなに小さな少年に、一喝されただけで…… 素直に、彼に従ってしまったのです。
 僕は驚いて、声も出ませんでした。
 身体が、カタカタと震えました。何だか、足に力が入りませんでした。
 僕は、少年を見ました。
 すると、少年も僕の方を見て、にこっと笑いました。
 もう大丈夫だ。
 その優しい笑顔は、まるで、そう言ってくれているようでした。
 ……ああ、僕は……
 僕は、声も出せませんでした。
 ただぐすぐすと顔を歪ませて、僕は、泣き出してしまったのです。
 涙が、止りませんでした。
 身体中の氷が溶け出していくような、そんな気がしました。
 人前でこんなに泣いたら、また父に怒鳴られてしまうかもしれません。だけど、僕は泣いてしまいました。身体が震えて、震えて、どうにもならなかったのです。
 こんな、こんなことは……
 僕は、はじめてで…… はじめてで……
 そんな僕に、少年はそっと近づいて来ました。
 そして、泣きじゃくる僕の顔をのぞき込むと、優しい声で言ったのです。
 ほら。これをやるから泣くな、と。
 少年は半ズボンのポケットから何かを取り出し、それを、僕の手に握らせてくれました。
 それは、シロムシクイを象った、小さなブローチでした。
 ほんのりと暖かい、まるで少年の温もりの塊……
 僕はしゃくり上げながらそれ見て、そして、目の前の少年を見ました。
 少年の胸には、僕の手にあるのとよく似た、キイロムシクイのブローチが輝いています。キラキラと、まるで勲章のように。
 少年は、言いました。
 また、一緒に遊ぼうな、と。
 彼は僕の手を遠慮無く掴むと、ぎゅっと両手で握りました。
 そして、とても、とても優しい眼差しで…… 僕に、微笑んでくれたのです。

 ……ああ……
 なんて、なんて…… 眩しいのだろう。
 僕の中に、何か光が射したような気がしました。
 暖かくて、優しい、お日さまの光でした。
 怯えて震えていた僕に、そっと手を差し伸べてくれた、彼。
 チョコレートをくれた、彼。
 偉いなと褒めてくれた、彼。
 あの恐ろしい父をいとも容易く従え、僕を助けてくれた、彼。
 その日初めて出会った、名前も知らない少年が…… 僕には、とても眩しく見えました。
 その少年が、その存在自体が、まるでお日さまのように思えました。
 僕に手を振り、去って行く、少年の姿。
 手の中のブローチを握りしめながら、僕は、それを胸の中に焼き付けていました。
 優しかった、彼。
 とても暖かかった、彼の手。
 彼は、また遊ぼうと言ってくれました。だけど…… きっと、もう二度と会うことはないでしょう。
 王子様のような彼と、僕とでは、住んでいる世界が違い過ぎる。
 子供ながらに、僕はそれを感じ取っていました。
 だけど。
 あの少年のことは、忘れません。
 あの少年がくれたお日さまのような光を、僕は、一生忘れません。
 これから先どんなことがあっても、どんなに辛いことがあっても…… あの少年のことを思い出せば、僕は、きっと耐えられる。
 きっと、生きていける。
 彼がくれたブローチを胸に抱いて、僕は、幼心にそう思いました。
 子供が何をと、滑稽に思われるでしょう。でも、僕は…… 心から、思っていたのです。
 そして、今も。
 辛くて、苦しくて、痛みに悶え呻いた夜も…… 僕を生かしてくれたのは、いつだって、あの人がくれた光だったのですから。
 千紗さん。
 あの人と初めて出会ったこの日のことを、僕は、忘れたことはありません。
 そして、これからも…… ずっと忘れないでしょう。
 
 
 
 
 少年と黒服の大人達は去り、そこには僕と父だけが残されました。
 現実が、また再び流れ始めたのです。
 たて続けに起こった奇跡は、もう終わってしまったかのように思えました。
 ところが……
 僕を取り巻く世界は、この時から変わっていきました。自分でも、思いもしなかった方向に。
 奇跡は、まだ終わってはいない。
 呆然と立ち尽くす、父の顔を見上げて…… 僕は、それに気付くことになるのです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
■ ここでまた続きます。
ちなみに、ここまでのバンリの過去は、普通のバンリも学園版のバンリ先生もほとんど同じです。
ただ、この過去話は普通のバンリの方で書いてるので、企業の規模とか千紗の地位の高さとかが全然違いますけどね。学園の方とは。
でも、バンリが辛くて暗い少年時代を過ごしたというのは、バンリというキャラの根源にあるもののようです。(なんて不憫な;)
そして、それを千紗に救われると^^
バンリ先生は、千紗の他にも音楽によって心を救われたので、あの通りのほんわかおっとり先生になりました。
それに対して、普通のバンリは千紗の他に救いがなく、しかも千紗と引き裂かれたエージェント時代に色々と辛い思いをしてきたので…… どこか影がある、憂い顔の青年になっています。
その分、千紗さん千紗さん度は学園版より遙かに高いですけどね^^

■ ところで、今週のヤミショ……
DollyShadowメンバー待望の官帽の再販ですって!? 曽根さんなんというGJ^^
しかも、ハンギングプランターも可愛くて嬉しすぎます。
バンリも千紗もヒナタもインドア派リヴリーなので、室内壁紙ばっかり使ってるんですよ。だから、室内用のアイテムが欲しかったのです。
このくすんだ色合いが、室内壁紙に良い感じで溶け込んでくれて嬉しいなぁ^^

banri47.jpg
「ふむ…… 軍服も悪くないかもしれない」
「ふふっ、とってもよくお似合いですよ、千紗さん」

頭の中では軍服コスですが何か^^
何やらいちゃつきはじめたご主人様達に、慌てて回れ右をするシロムシクイのマギィです。
マギィはバンリの使い魔なので、バンリの望み通りに動いてくれます。(動物並の自我は持ってますが)
ちなみにこのマギィ、千紗がくれたブローチを媒体にしてバンリが造った…… とかだったらいいですね^^(なんという中二ry)
 
 

 
 
■ そんなバンリが、今日降臨してから100日を迎えました。
おめでとう、バンリ!^^

banri46.jpg
「あは…… なんだか、恥ずかしいです……」

何だかずっと前からいるような気がしますが、まだバンリが生まれてから100日なんだなぁ…… ちょっと意外な感じです。
バンリ達が降臨してから、何だかまた擬リヴが楽しくなりました。いつもバンリ達を構って下さる皆様、本当にありがとうございます^^
まだまだ100日。これからも千紗さん千紗さんでね、バンリ^^ (によによ
 
 
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