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ソア君とバンリ先生 [小説:フェアメル学園]

 
 
「バンリ先生は…… どうして、歌うのがお好きなんですか?」
 バンダナの少年が、そんなことを言う。
 バンリはうん? と振り返って、くすっと笑った。まるで、どうして飴玉は甘いのかとでも聞かれたような気分だ。
「そうですね。どうしてそんなことを聞くのですか? ソア君」
 逆に、質問を返してやる。
 すると、ソア少年は笑顔のまま『んー』と首を傾げた。質問が返ってくることは、予想していたのだろう。そして、それは彼にとって少し嬉しいことのようだった。
「うーん、何て言うか…… 僕達みたいな男子って、音楽の授業って、少し照れくさい気がするんです」
「ふふっ、そうみたいですね」
「そういうの、バンリ先生はなかったのかなって。ちょっと、そう思ったんです。あはは」
 すみませんと、ソア少年は苦笑する。
 失礼なことを聞いた、という意味ではないだろう。きっと、バンリ先生はそんなことないですよね、という苦笑。
 バンリは、またくすくすと頬を緩めた。
 窓から入り込む風に、カーテンがひらひら揺れている。窓掃除をする生徒達の笑い声が、一緒に流れ込んでくる。
 机を丁寧に吹くソア少年を、バンリは目を細めて見た。
 ピアノの周りに集まる時、少しだけ恥ずかしそうに立つ彼。
 だけど、みんなで歌声を響かせているうちに、だんだんと、だんだんと、その瞳を輝かせていく彼。
「そうですね」
 黒板消しを滑らせながら、バンリは黒板に向かって言う。
「僕も、照れくさいと思った時期はありますよ。みんなと同じようにね」
「……え?」
 がたっと、机が音を立てた。
 ソアという少年は、意外と頭が回る子だと思う。何も考えていないようで、いつも何かを考えている。彼の表情や言葉の選び方を見ると、そう思えてしかたがない。そして、どこか自分に似ていると思う。
 だから、裏返った「え?」という声は、あまり彼らしくないものだった。
 うっかり出てしまった、自分でも予想外の声。
 バンリはくすくすと笑って、教壇の上から少年に向き合った。
 ソア少年は、心から意外そうな顔でバンリを見ている。そして、どこか嬉しそうな目でバンリを見ている。
「僕も、昔は音楽が照れくさかったものです。みんなの前で声を出して、どこか照れくさいような歌詞の歌を歌う…… 恥ずかしいな。照れくさいな。僕だって、そう思いましたよ」
「……先生でも、ですか?」
「ふふっ、もちろん。僕だって、その頃は男の子だったんですから。男の子が自然に感じるようなことを、僕だって感じていたのです」
 胸に手を当て、昔を思い出す。
 大きな声を出すのが、恥ずかしかった。
 愛とか夢とか希望とか、そんな歯の浮くような歌を歌うのが、何だか照れくさかった。
 自分は特に内向的な性格で、自分に自信も持てずにいた。だから、みんなの前で歌うというのは、余計に恥ずかしくて、照れくさかった。
 でも、それがどうして歌が好きなったのか。
 果てには、音楽教師にまでなってしまったか。
 そんなことは、とても単純なこと。そして、当たり前のこと。
「結局は…… 歌うのが、楽しかった。それだけです」
 黒板消しを置いて、バンリはくすっと笑う。
「照れくさい、恥ずかしいと思っていても…… 歌うことは、とても楽しいこと。みんなの前で歌うのは恥ずかしくても、独りで歌うのは楽しい。それならば、みんなの前で歌ったって、きっと楽しいはず…… でしょう?」
「……………」
「そう思って、少しだけ勇気を出してみれば…… みんなの前で、いいえ、みんなと一緒に歌うのは…… とても楽しいことだったんです。そうじゃありませんか? ソア君は」
 ソア少年は、わずかに目を見開く。
 どこか恥ずかしそうに輪の後ろに立つ少年。だんだんと、だんだんと輝いていく、その瞳。その、歌声。
 くすくすと、バンリは微笑む。
 その笑い声と笑顔に、ソア少年はハッとした顔をすると、ほんのりと頬を赤く染めた。
 気持ちの良い風が、窓から流れてくる。
 熱くなった少年の身体を、風が優しく宥めてくれるだろう。よしよしと、まるで背中をさするように。
「……ソア君」
 必要なのは、ほんの少しの勇気。
 勇気というその言葉は、何故か彼に最も相応しい気がする。はにかんだように頬を染める、この活発な少年に。
 かつて、僕がもらった勇気。
 それを、今度は僕から…… ソア君、君に。
「僕は、ソア君の歌が好きですよ。一緒に歌っていて、とても楽しいと思います。だから……」


 ――――そうか? 俺は好きだぞ、お前の歌。
 隣からお前の歌ってる声が聞こえると、何かホッとする。
 だから、お前にはもっと……


 その続きは、言わなかった。
 自分がもらった勇気にも、その続きはなかったから。
 だけど、それはちゃんとわかった。言葉にならなくても、伝わった。理解した。
 だから、自分もそこで言葉を切る。
 にこっと、笑って見せる。
 少年に、それは伝わっただろうか。わからない、けれど。
 だけど彼は、一瞬だけ頬を真っ赤に染めると、やがてにっこりと笑った。
 どういう意味かはわからない。ただ、照れくささが限界に達しただけかもしれない。
 でも、バンリはそれに満足して、くすっと微笑みを返す。
 平和な、午後だった。
 窓からの風に、カーテンがひらひらと揺れていた。
 清掃の時間が終わる頃、生徒達はバンリの元に集まり、音楽室の掃除が終わったことを告げる。
 ありがとう、ご苦労様でした。バンリも、それを労った。
 そして、教室へ戻っていく生徒達の中で、ソア少年だけがふとバンリを振り返り、にこっと笑って会釈した。
 バンリも、にこっと笑って、応えた。






「……ねぇ、千紗さん」
「うん?」
「千紗さんは、中学生とか高校生の頃…… 歌を歌うのが、恥ずかしかったですか?」
「ああ、音楽の時とかはな。カラオケは好きだったが。ん、だが…… 音楽自体は、嫌いじゃなかったぞ」
「どうしてですか?」
「お前の歌が聴けるからさ。……他に、理由があると思うか?」
「……あはは…… 千紗先生は、褒め上手な方ですね」
「ああ。褒めて伸ばすが俺のモットーだ」
「ふふっ……」













■ フェアメル学園ネタでした。
学園ソアとバンリ先生は仲良しだったらいいと思うのです。右側属性の子同士のふれあいということで^^
そういえば、学園の体育祭…… 作品提出期限が近付いていますね。
どんなネタを書こうかなぁと思いつつ、色々と妄想はあるのですが、これだってなかなか決まりません。
うちの子だけの話投稿するのも…… かと言って、他のお子様お借りしても良いものかどうか。
ううん。もうちょっと考えます。

■ 話変わって、今週と先週のヤミショとか今月の島とかの話。
今月の島は…… あの流れ落ちる滝にちょっと酔ってしまって、設置出来ません。あの流れ落ちる速さ、酔うんですけど~……orz
今週のヤミショも、今回はひとまず見送りで。シロムシクイ帽子が出たら考えます。
でも、先週のヤミショのリボン再販はGJ!
うっかりバンリさんに買ってしまいました。しょうがないですよ、バンリさんラヴォですもの。可愛いものが似合うんですもの。

banri53.jpg
「ど、どうでしょうか…… 見苦しくないですか……?」
「見苦しいものか。それどころか……(ごくり) よく、似合っているぞ。うん」
「……あ、ありがとうございます」

ここはあえて、女装とかじゃくて、28歳の普段のバンリにリボンを付けたいですね。
可愛いリボンくっつけられちゃって、はにかんでればいいです^^
バンリの色に黒リボンが合ってて嬉しいなぁ。リボンが乗っかってる位置も丁度良いし。
またバンリのお気に入り帽子が増えました^^(バンリのというより、千紗のと言うか、飼い主のと言うか)

■ あ、バンリの過去話ストップしててすみません。ちょっと「うみねこのなく頃に」をやってました。
……耐えた。よく耐えた自分。頑張った……!
でも、エピソード4は面白かったですよ。さすがだなぁと思いました。
解答編が楽しみです^^
アニメも気になるけど、とても怖くて見られない……orz
でも、アニメの譲二兄さんがすごい好みな感じの穏やか眼鏡青年になってて、ときめきが止りません。
穏やか眼鏡大好物……!(*>▽<*)
 
 
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